李闘士男『お父さんのバックドロップ』

◆『お父さんのバックドロップ』監督:李闘士男/2004年/日本/98分
お父さんのバックドロップ』を見た。予告を見て、面白そうだと思っていたが、実際に見てみると予想をはるかに上回って面白い。私のなかでは、傑作映画になりそう。
さて、この映画のクライマックスは牛之助の無謀とも言える空手チャンピオンとの対戦だ。この対戦へもっていくまでのいわば動機付けの点においても、しっかり描かれていて良かったと思う。それはともかく、このプロレスと空手の異種格闘技戦が、なぜこの物語に登場するのか。異種格闘技の意味は何なのか。深読みをしてみたい。
そのために注目したのは、異種格闘技の「異種」の部分である。「異種」に注目してみると、この映画にはさまざな「異種」が登場していることに気がつくだろう。東京から大阪に引っ越ししてきた牛之助の息子和雄は、大阪弁のなかで東京の言葉(標準語)を話す「異種」として、クラスメートからいじめられてしまう。和雄と同じアパートに住む哲雄もまたクラスからはみ出している存在だが、彼の父親が在日であることが物語の途中で分かる。
要するに、異種格闘技戦は、この映画の世界の象徴なのだ。「異種」が戦う場としてのリング。プロレスもまた「異種」が集う場所であるのだろう。プロレスというサブカルチャーが、「異種」を取り込むことによって成り立ってきたのではないか、そういう思考へとこの映画は誘うのである。こう考えると、この映画はかなり意義深いものになるのではないだろうか。