吉田喜重+岡田茉莉子トークショー
第七藝術劇場にて。『秋津温泉』上映後、二人のトークショーが行われる。とても興味深い話を聞くことができて感激。なにしろ一番前の席で聞いていたので。
吉田監督の話で、なるほどと思ったのは、この映画をアンチ・メロドラマとして創ったということだ。アンチ・メロドラマにするために、監督がとった方法は、この映画を恋愛ドキュメントとして撮ることだったと言う。この映画の主人公の二人は、実は17年間の月日の中で、実際に一緒に過ごした時間はわずか半年にもならないだろう。4回ほど二人は出会うわけだが、結核の養生ではじめに数ヶ月過ごした後の出会いでは、一日とか二日とかしか一緒に過ごさないわけだ。したがって、二人の恋愛はほとんどが空白に満ちていると。ほとんど一緒に過ごさない二人の間で、いかにして愛を描くのかが問題になる。メロドラマに付きものの二人の恋愛を妨げる障害は、ほとんどないに等しい。このような状況でも二人の間に愛が可能なのかどうか、それを問いたのがこの映画だった。この時、監督はメロドラマではなく、二人の人間のドキュメントを撮ることでこの問題に答えて見せた。このお話は、非常に参考になった。
たしかに、二人の間には空白が多い。それでも、この映画は二人の愛が、女の「情念」が非常に説得力をもって語られていたと思う。二人の間に愛は可能だったのだと。
トークショーのおかげで、ますます吉田監督作品が見たくなる。もっとたくさん見て、吉田喜重の映画とは何かを知りたい。