『三島由紀夫が復活する』

小室直樹三島由紀夫が復活する』毎日ワンズ、2002年11月
小室博士の三島論なのだけど、残念ながらあまり参考にならない。三島の文章の引用がたくさんあって、ほとんどそれについての説明がない、というのは本書の特徴だ。なので、小室が何を主張したいのかさっぱり分からない。引用を読んで、読者はそこから何かを感じ取れ!ということなのだろうか。うーん、それはちょっと無理なんじゃないだろうか?
それでも、強いて良い点を挙げれば、仏教、特に三島が作品中に取り入れている唯識論などの説明は、かなり分かりやすい。宗教社会学についての説明はさすがお得意の分野だけはある。三島の作品内における「仏教」に関して、その理解の手助けにはなると思う。それ以外に読むべき箇所はあまりないのだけど、まあこんな本もあっても良いかな、なんてたまには寛容になってみる。

三島由紀夫が復活する

三島由紀夫が復活する