小著でも拡がる知の世界

山田ズーニー『伝わる・揺さぶる!文章を書く』PHP新書
酒井順子『少子』講談社文庫
熊野純彦『カント 世界の限界を経験することは可能か』NHK出版
薄い本ばかりなので、一気に読み通してみた。
『伝わる・揺さぶる…』は、文章を書くのに重要なことは結局読み手を意識して書くということで、つまり文章を書くということは、言葉を使ったコミュニケーションであるということになるだろう。文章を書く目的が決まれば、そのためにどういう風に書いたら良いのか、という戦略が必要となるし。その戦略をいろいろ教えてくれる本だった。
『少子』はけっこう面白い。読んでいて馬鹿らしいなあと思うけれど、こういう自分の視点から物事を考える文章というのは、けっこう好きだ。それが切り口に魅力がある、ということなのだろう。一カ所だけメモしておく。

「なぜ産まないのであろうか?」ということを考えていくと、我ながらつくづく、自分の甘さ、弱さ、ズルさといったものを感じます。もし私が自分の祖母だったとしたら、「面倒」とか「痛いし」などといって子産みを避ける我が孫のふがいなさに、憤死しそうになることでしょう。/しかし残念ながらこれが、紛う方なき現実なのです。私の感覚は、決して特殊なものではありません。(p.234)

どうしてか、一番最後に書かれたこの文章が気になって仕方がない。この前の日記に、他者との関係について書いておいたけれど、おそらくその時に考えていたことに近い内容だからに違いない。この辺の考えをもっと極めていけば、何か自分のためになるような理論ができそうなのに、と思う。
『カント』、この本はすばらしい。哲学の門外漢である私でも、理解できる内容だった。重要な用語は、きちんと説明してくれるし。こういう入門書が理想的だな。
熊野氏は、カントの思考を最後にこうまとめている。

カントの思考は、理性批判の哲学であろうとする、その意図じたいにおいて、境界にかかわる思考であり、境界を問う思考であって、そのことで同時にまた、それじしん境界において紡ぎだされる思考であったのである。(p.113)

境界線を巡って思考した哲学者カント像が浮かび上がってくる。とりあえず、なにかカントの本を読んでみたくなる。