「正しい」だけ
◆阿部潔『彷徨えるナショナリズム』世界思想社
よくあるナショナリズム批判、オリエンタリズム批判の本。というか、はっきりいって批判ばかり。90年代の日本に見られる「ナショナリズム」「ナショナルなようなもの」への批判は、正しいのだけど、それを取り上げ、それらはオリエンタリズムにすぎないと批判だけしていても、論としては退屈になる。どんな現象もナショナリズムだ、オリエンタリズムだ、それでは駄目なのだ、という調子。繰り返すが、分析は「正しい」。しかし、正しいけど、何か不満が残る、そんな本だ。
それにしても、研究論文に限らず、言っていることは「正しい」けど、どうも納得いかないなあ、という現象は世の中にたくさんある。逆に、言っていることは「間違っている」けど、その内容に魅力を感じてしまう、ということもある。こういうことがどうして生じるのだろう?と最近考えてみたりする。どうしてなのか、いまいち分からないのだけど。