モーリス・パンゲ(竹内信夫訳)『自死の日本史』

◆モーリス・パンゲ(竹内信夫訳)『自死の日本史』筑摩書房
けっこうな厚さの本なので、読むのに少々苦労した。なにせ、古事記の時代から三島の自決までの、<意志的な死>という日本の精神を論じるという壮大な試みだ。
三島の死については、こう書かれてある。

彼は<意志的な死>を欲したのだ。彼の自己意識は、そのことにおいて、何世紀にもわたる日本人の意識の反映であろうとする。一個の独自存在たる彼は、今をもって存在することをやめるという意志の純粋決定に同化することによって、より広い時間のなかに融けて行こうとする。一個の命がそこで終わる。それはひとつの歴史が生み出した命であった。

こうして運命に見出された人間の死として、三島の死は歴史の中に刻まれる。それは、三島の歴史でもなく日本の歴史でもない。「人間」という存在の歴史なのだろう。