雑文
よくよく自分の心に照らし合わせて考えてみると、私自身の不安は、たとえば宮台真司氏が唱えるような「過剰流動性による不安」にあるのではない。むしろ、流動性と言われているのに流動的ではないところに不安がある*1。つまり「硬直性」の不安だ*2。 これに…
私も返していない、というか返せない。 日本学生支援機構(旧日本育英会・横浜市)の育英奨学金の返済を1年以上滞納している人が2005年度末時点で、14万2000人と過去最高だったことが12日、同機構の調査で分かった。不良債権として扱われる3カ月以上の滞納も…
ときどき、「〜〜コンサルティング」だとか称して、俗流心理学を振りかざし、自己啓発的な文章を書いているブログとか目にするけど、本当にバカらしい。その一方で、ああいう文章を読んで、「感動した」「人生で大切なことだ」「仕事に役立つ」などと真に受…
「小説読者の質は果たして落ちたのだろうか*1」について、少し考えることがあったのでメモしてみる。 佐藤亜紀の「この世からは小説を読むための最低限のリテラシーさえ失われてしまったらしい」という意見に対し、筆者は違和感を覚えるという*2。その理由と…
自分は他人のブログを正しく評価できると思い込んでいて、あれはくだらない、あれはすばらしいとか書く。 自分は正しく他人のブログを読んでいると思い込んでいる理由が実際は精読によるのではなく、個々のインフォメーションの集積によっている(気が付いて…
日本の大学にも、アメリカのような「テニュアトラック」制度が導入されるという*1。 選ばれた若手研究者が、一定期間研究資金をもらって研究をつづけ、期間終了後に審査をし、認められれば教授や准教授のテニュア(終身在職権)が得られるとのこと。従来の制度…
朝日新聞に「フリーター 「氷河期」の若者を救え」という社説があった。そこでは、「今後は、とくに「就職氷河期」と呼ばれた時期の波をかぶったフリーターに対する手厚い支援が求められる」という。そして、こう提言する。 民間企業も積極的に取り組んでほ…
また、ふつう本の背だけしか見えない棚に、スペースをつくって本の表紙が見えるようにしてディスプレイしてある場合がある。これは「面出し」と言って、売れている本や、書店が売りたい本がそういう扱いを受けているのである。(石原千秋『大学生の論文執筆法…
本屋で今週の『読売ウィークリー』(2006年6月18日号)を立ち読みする。「バブル再来!06「就活」」という記事がある一方で、このあいだ起きた「海洋学者」一家の事件の記事もあり、その二つの記事が気になったのだ。 「就活」の記事は、大手企業だけではなく…
産経新聞に「雇用増1年で79万人 9割以上が非正社員」*1という興味深い記事が出ていた。 景気回復に伴って雇用環境が改善する中で、この1年で増えた雇用者のうち、9割以上が非正社員であることが3日、総務省の調査でわかった。 雇用は増えたと言っても…
『Newsweek(日本版)』(2006年6月7日)に「学歴難民クライシス」という特集があると知ったので、さっそく本屋に行って買ってきた。 記事によれば、一流大学を卒業しても、あるいは大学院を修了しても仕事にありつけないのは、日本に限らず今や他の先進国によく…
『論座』2006年6月号に、「国立大学、3年目の回答」という特集がある。そこに広田照幸氏が「危機に瀕する研究者養成の場 人文・社会科学系大学院の現在」という論文を書いている。ここで、現在の大学院生の置かれた状況が論じられていた。 広田氏は、自身の…
博士課程修了および中退者が、アカポス以外の道に進む際に、それを支援する組織があると良いのになあと最近考えている。こんなことを言うと、世間からは「自己責任だ」「甘えるな」とか言われそうだけど。しかし、博士課程を数年過ごした人が何らかの事情で…
今、必死に就職活動している。早く仕事にありつきたいからだ。その際、就職サイトを利用している。使ってみると、これがけっこう便利だったりする。とはいえ、さっぱり成果があがらない。応募しても、翌日には「残念ながら貴意に添えません」という例のテン…
そこそこうまく機能している制度や慣行を、もっとより良くしようとか、別の可能性に変えることができるのではないかと考えることはいけないことなのか。 不満がわずかならば、そういう現状は肯定すべきなのか。あらゆる人が幸福になる社会などありえないのだ…
「ウラゲツ☆ブログ」さんの記事は面白くて、参考になるので、時々読んでいる。そのなかで、「アマゾンの版元直取引が本格化*1」という記事があり、この内容も興味深かった。 ところでアマゾンの話とは別に、この記事の末尾には、「「国民一人当たりの借金」…
身近なところから哲学は始まるとよく言われるが、昨今の情報論、データベース論が実は日常生活に深く関わる重要な問題であったのだなと実感する出来事が最近あった。 というのも、今、私が住んでいる市は4月から指定ゴミ袋制(有料制)に変わるのだが、住民登…
自分で書いた文章を自分で回答できないような問題を作って・・・ということを書いて、入試問題がいかに愚劣であるかという結論に導く人が時々いるけれど、これは大層な考え違いである。 書いたときの私と読んでいる私が「別人」であるのだから、何が書いてあ…
職がない。大学院で博士号を取ったなら、研究職を目指せばよいのだが、それもうまくいかない。いつポストの空きができるのか分からないし、たとえ募集があったとしても、少ないポストに多数の応募者がいるわけだから、簡単にポストが得られるわけではない。…
立岩真也×稲葉振一郎トークセッション「希望の国家論」を聞きに行った。「国家論」とあるものの、あまり「国家」の話がでないという不思議な展開だったが、トークの中身は非常に興味深いものだった。話題の中心は、発売されたばかりの『マルクスの使いみち』…
『文學界』2006年3月号に、仲俣暁生が四方田犬彦『「かわいい」論』の書評を書いている。仲俣は厳しい調子で、『「かわいい」論』を批判していた。曰く、「議論の筋道には大いに欠落がある」「(引用者注「かわいい」に対して)「共鳴」がいちどでもあったの…
今、人文系で最強のタームは「他者」と「多様性」だと思う。この二語を肯定的に使えば、それらしき論文が書けてしまう。哲学者は「他者」概念に萌え萌えだと、たしか年末の『図書新聞』で古賀徹氏が書いていた*1けれど、その通りなのだ。 この二語を手にする…
「我々の使用している日本語は本質的にロジカルでないし、また対話も存在しない。あるのは空気を醸成するためのモノローグの集合だけだ*1」ということが分からない。「日本語」が「ロジカル」でない? 「日本語」に「対話」がない? 「日本語」が話したり書…
何か出来事があったとき、それについての意見を知るのにネットはすごく便利だなと実感する。たとえばはてなブックマークで、たくさんブックマークされている記事を読むだけでも参考になることが多い。 ここ数日の新聞記事やいくつかブログの記事を見て、思っ…
京都の「大文字」すなわち「五山の送り火」について気になったので、とりあえずWikipediaで調べてみる。しかし、結局その起源がよく分からなかった。グーグルで検索してみても、どうやら起源に関してはいくつか説がありそうだ。 ところで、「五山の送り火」…
どうも橋本治が感じている「孤独」と仲俣が理解している「橋本治の孤独」は、全然別のもののように思えてならない。 私は、橋本治の熱心な読者ではないのでよく分からないが、おそらく橋本治の「孤独」とは永井均的な「私」に近いのではないかと思う。(勘違…
上記のエントリー(「「近代」はどこに行ったのか」)は、読み直してみると非常に内容が悪いことに気がついた。書いているときには気が付かなかったが、いくつか重要な批判を頂いたので、それらをふまえて反省し、今後に役立てたい。 まず、重要な問題は、三島…
(注:このエントリーは下の「反省と課題」というエントリーと合わせて読んで頂きたい。) 『新潮』2005年12月号を買った。星野智幸論を読んでみたが、ひとつ疑問に思うことがあった。ここでは、この論の冒頭に注目してみたい。星野論の冒頭は次のようなものだ…
asahi.comのBOOKのページで特集「「愛と観察」希望育む 鷲田・フィールド対談」という記事がでていた。読書の「秋」にちなんだ特集だ。哲学者の鷲田清一と、日本文学・日本文化論のノーマ・フィールドが対談をしているので、少し興味を持った。 対談を読んで…
「女人禁制の大峰登山目指す 性同一性障害の男女ら」(『Sankei Web』より)というニュースを見つける。 問題意識は理解できる。特に『女人』とは何かという議論は重要なことだろう。それと、開放するか/しないかの議論は、とりあえず切り離したほうがいい…